本記事は、コピーライター歴30年の私が、日々進化するAIの能力を実際に試した経験に基づき、2026年の時点で「AIに任せられること」と「人間が担うべき領域」の境界線について記した記録です。
「AIがここまで進化したら、コピーライターやライターの仕事って、そのうちなくなるんじゃない?」。最近、ときどき聞かれる質問です。今回は、今のAIに対して私が思っていることや実際にどう使っているかをご紹介します。
関係者からは聞かれません
冒頭のような質問をするのは、クライアントやフリーランス仲間などではありません。この仕事とはまったく関係のない知り合いがほとんどです。実際に制作の現場にいる人たちは、今のAIに何ができて、まだ苦手なのが何かを体感しているからかもしれません。
もちろん私も使っています
私もすでにAIを使っています。仕事を奪われるかもしれないから使わないなんて考えはありません。むしろ逆で、どれくらいのことができるんだろうと興味があって試してみました。コピーを書いてもらったこともあります。丸ごと仕事を任せようと思ったわけではなく、純粋に実力を知りたかったからです。
ちなみに、このブログのすべてのアイキャッチ画像もAIと一緒につくったものです。
まだ物足りません
独特のクセ
使ってみて最初に感じたのは、AIには独特の文章のクセがあることでした。
よく使う文体があり、似たような表現を何度も繰り返します。読んでいるうちに「ああ、AIが書いた文章だな」とわかってしまいます。キャッチコピーでもボディコピーでもクセを感じます。
ですが、これは時間とともに改善されていくでしょう。今より自然な文章を書くようになり、クセも少しずつ減っていくはず。上手なプロンプトをつくれば今でもかなりイイ線をいくかもしれません。
それでも現時点では、私のほうがいい文章を書けます。AIの文章のままで大丈夫と判断する同業者や仕事関係者はいないはずですが、AIの文章で十分と思える人はそもそもプロに依頼する必要を感じないでしょう。
指示や修正のほうが手間
AIは「ボールペンとは何か」という説明ならいくらでも書けます。歴史も、特徴も、選び方も、一般的な情報なら驚くほどたくさん出してくれます。
でも、仕事で私たちが向き合うのは、そんなありふれたボールペンではありません。ある会社が何年もかけて開発した一本だったり、今までにない画期的な一本だったり、さまざまな特長や訴求したいことが詰まった、クライアントにとっては特別なボールペンなのです。
なぜこの商品をつくったのか。
どんな人に届けたいのか。
開発者は何を考えていたのか。
そういう背景までは、AIが最初から知っているわけではありません。私たちは担当者に会い、話を聞き、社内事情なども読み取りながら、その会社の空気を感じ、コピーに吹き込みます。
AIに伝えれば書いてくれるかもしれません。でも、その情報をこまごま入力したり教え込んだりする手間も必要です。どっちみちAIが出してきたコピーはそのままでは使えません。修正指示を出すと、ひとつ前の条件を忘れてしまっていることもあります。整理して入力し、AIが出したコピーを確認して調整する。その手間がどうせ発生するのなら、私は自分でコピーを書きたいです。
言わずして表現するが苦手
たとえば、「春」「楽しさ」を感じさせたいという場合、そうお願いすると、「春」と「楽しい」という言葉をそのまま使ったコピーをたくさん出してきます。
それなら私がお金をいただいて書く必要はありません。「春」と書かなくても春の景色や空気や色彩が自然と浮かんでくる。「楽しい」と書かなくても読んだ人の気持ちが変わる。そんなコピーをつくるのが私の仕事です。
「春」や「楽しい」を使わないでとお願いすると、一つ残したり、代替ワードばかりしつこく使ってきたりと、まだまだできない子です。私のプロンプトが悪いのかもしれませんが、今の時点では人間が書いたほうがよいものができると断言します。
一次情報の確認は必須です
あるテーマや商品について質問することもあります。豊富な情報をすぐさま出してくれ、とてもありがたい。でも、それをもとに仕事をするなら、そのまま信用することはできません。どのみち一次情報をあたります。
現時点では、概要をつかむ程度に読み、その後で一次情報を探すという使い方をしています。
キーワードの抽出には使えます
こう書いてきてアレですが、私はAIを否定しているわけではありません。むしろ毎日のように使っています。AIがつくってくれたこのブログのアイキャッチ画像も、すばらしいと思いませんか。たまにちょっとおかしな部分があるのはご愛敬。でも、プライベートのブログになら胸を張って使えるレベルです。
コピーの助っ人という意味ではこれからを期待したいレベルですが、いわゆる類語のピックアップとしては使えるし早いです。何度か聞くとボキャブラリーが手詰まりになり同じ言葉ばかり出すようになってくるので、違うジャンルの商品を想定した言葉や条件に変えるなど振り幅を少し広げる指示を出すと、使えそうな言葉が出ることもあります。100個のうち1個くらいですが。
AIは日進月歩。1年後には今とは全く違う感想を持っているかもしれませんが、現時点での感想は以上です。
最後に(まとめ)
現状の境界線: 一般的な情報はAIに任せられますが、商品背景やブランドの空気感を込めた表現は、現時点では人間に分があります。
手間をどう捉えるか: AIへの修正指示や入力の手間を考えると、結局は自分で書いたほうが早い・質が高いという判断をしています。
使い方の工夫: 類語の検索やアイデアの振り幅を広げるためにAIを補助として活用し、完成度を高める責任は人間が負っています。

