本記事は、コピーライター歴30年の私が、広告代理店・制作会社・直接取引・仲間からの依頼という、それぞれ異なる取引形態での仕事の特徴と、その中で感じてきた向き合い方についての記録です。
フリーランスのコピーライターである私が仕事をもらうルートはいくつかあります。広告代理店や制作会社を通した仕事と、クライアントとの直接取引、そして割合は少ないけれどフリーランス仲間から依頼されることも。今回は、30年の経験を通して実感しているそれぞれの取引の特徴を説明します。
広告代理店は圧倒的な安心感
世間を騒がせたニュースの影響もあってか、特に大手広告代理店に対して厳しい見方をする人も増えました。でも、私の実感はかなり違います。もしかしたら、単に私が「アタリ」な人に巡り会えているだけかもしれませんが。
まず、近所の商店街の個人経営の和菓子屋さんが「うちの広告をやっておくれ」と広告代理店に頼んでも、受けてくれません。基本的には取引条件や信用面も重視されるため、一定規模以上の企業がクライアントになることがほとんどです。よって、小さな代理店をのぞき、世に知られる広告代理店が扱うのは、それなりに知名度のあるクライアント。私たち制作スタッフへのギャラの基準も高めです。
そして、たとえ案件が最後まで完了しなかったとしても、作業分をちゃんと支払ってくれます。他の会社が払ってくれないわけではないのですが、少なくとも代理店なら払う払わないで揉めることはないので、安心感があります。請求も支払いも超スピーディ。請求書を忘れていると催促されるほど経理面がしっかりしています。
人にもよりますが、オリエン内容をきちんと伝えてくれ、スケジュールもしっかり組んでくれます。中小の制作会社のディレクターだとこのあたりの仕事力に物足りなさを感じることもあるのに対し、広告代理店は総じて抜かりなく進めてくれる印象です。修正の丸投げもなく、クライアントの意図を整理してから共有してくれます。
世間では「代理店=中間マージンを取る存在」という見方もありますが、実際には、中間に存在するだけの価値がある、クライアントと制作側のすぐれた調整役。参考になる調査結果や過去の競合広告がすぐに用意されるのも、膨大なデータを有している代理店ならではです。
少し物足りない点を挙げるとすれば、クライアント→広告代理店→私という流れなので、クライアントと直に話せない案件もあること。でも広告代理店の人はクライアントとちゃんとコミュニケーションして必要なことは伝えてくれるので、「聞いてないよ」というトラブルはなく、不満につながるレベルはまったくありません。
それから、プレゼン落ちも含めて最終的に世に出ない案件の割合は広告代理店がダントツでトップです。代理店はコンペやプレゼンで仕事を獲得する機会が多く、一つのクライアントからたくさんの仕事を受けて進めているので、何らかの事情でペンディングになるのも珍しくありません。制作を進めても日の目を見ない案件が一定数あるのは致し方ないといえます。逆に、手がけた仕事が形にならないことに強いストレスを感じる人は、広告代理店経由の仕事は向いていないかもしれません。
制作会社案件はチームワークが生まれやすい
制作会社からもらう仕事の流れは広告代理店と同じです。違うのは、クライアントとの打ち合わせに同席する割合の高さ。小春がいたほうが話が早いという判断なのかどうかは知りませんが、制作会社から同席を求められ、私も同席したいので参加します。
制作会社と組む仕事はいわゆるレギュラー案件(定期的に発生する案件)の割合が高く、制作会社のディレクターとデザイナー、そして私で担当します。
クライアントと直接話せる案件は、商品の背景や制作物の目的の“ほんとのところ”を理解しやすく、会話の中で小さな提案をしてみるのも可能。回数を重ね、撮影や取材の現場でも顔を合わせるうちに、信頼も深まります。制作会社のディレクターやデザイナーとのチームワークも醸成されていきます。
街で似た事例を見たりアイデアを思いついたりしたら「こういうの、やりたいですね」とコミュニケーションしやすい距離感の近さも魅力です。
注意したいのは、制作会社(または担当者)の仕事力です。大手広告代理店からの仕事をばんばん受注していて社員数が多く制度も整った制作会社、広告代理店に劣らないディレクションや調整機能を果たしてくれる制作会社、個人経営に等しい制作会社、小春にほぼ丸投げの制作会社もあります。
どれがいい悪いではなく、特性を見極めた上で仕事を進めなければなりません。たとえば、丸投げというと悪い印象があるかもしれませんが、中抜き金額の割合も少なくて私に好きにやらせてくれて心地よく進めさせてくれるなら悪くないという判断もできます。
支払い能力だけは気をつけておきましょう。作業が完了してから請求までの期間、請求から支払いまでの期間があまりにも長い制作会社は警戒することをおすすめします。
直接取引は充実感が大きい
ごく少数ではあるものの、クライアントとの直接取引も存在します。上で紹介した制作会社案件よりもさらにクライアントとの距離感が近く、提案もしやすく、成果も伝えてくれます。担当者との関係が良好だからこそ直接取引につながっているので、人間関係のストレスもほとんどありません。
私のようなフリーランスと直接取引してくれる会社は、どちらかというと規模が小さめです。だからこそ私がかかわった仕事の影響力が事業に対して大きく、充実感があります。長く付き合っているクライアントは、まるで社員のように親しく接してくれます(いい意味で)。
実はギャラも実はそれほど悪くなく、がんばって払ってくれていると感じる場合が多く、コミュニケーションや人間関係が良好なのを考えれば、私にとってはよい仕事です。
フリーランス仲間からの依頼は単純にうれしい
私の仕事の割合としては多くありませんが、フリーランスのデザイナーから仕事を依頼されることもあります。制作会社の仕事でチームを組んだデザイナーが「知っているクライアントさんがコピーライターを探していて」と声をかけてくれます。
こういう連絡があると、その案件のギャラがどうこうよりも、まずうれしくなります。以前の仕事で私のことを評価してくれたんだと思うからです。
この場合、広告代理店や制作会社案件とは少し性質が違います。会社という組織を通した取引ではなく、個人同士の信頼関係で成り立つ仕事なので、条件の確認がなあなあになるおそれも。業務の範囲やギャラは最初にきちんと取り決めておくことが大切です。
当たり前ですが、フリーランス仲間からナショナルクライアントの仕事のお声がかかることはまずなく、どちらかといえば規模が小さめのクライアントで予算に余裕はありません。それでも、制作物への意識と責任感があり、対応がきちんとしているクライアントの仕事ならよろこんで受けます。立ち上げたばかりの組織で、ギャラがとても少なかったとしても、みんなでつくりあげる楽しさがあるなら受けます。私が受けないのは、予算がとても少なそうな上に、発注者意識が強く、発注前に提案をいろいろと求めてくるようなクライアントの仕事です。
取引の形式としては、クライアント→デザイナー→私と、クライアント→デザイナーと私にそれぞれ支払いという2通りがあります。実態は直接取引と変わらないので、コミュニケーションがしやすく、大きな充実感があります。
今回は私の取引形態の違いをご紹介しました。どの形態に絞りたいという意識はまったくなく、いろんな種類があるのが仕事だと思っているので、それぞれの違いを楽しんでいます。
最後に(まとめ)
各社によさがある: 広告代理店は安心感、制作会社はチームワーク、直接取引は充実感と、どの形態にも異なるやりがいがあります。
向き合い方: 取引形態に優劣はありません。それぞれの環境なりのやりがいと楽しさを味わいます。
現場のリアル: 手がけた仕事が形にならないことや修正のやり取りも含め、これら全てがコピーライターという仕事の日常です。

